
SESSION.01
CEO × Nevermile 草創期メンバーネバーマイルの核を大切にしながら、組織の変化を楽しんでいきたい

ネバーマイルの変化
―創立約5年間で「印象的だった」「転換点だった」という出来事はありますか?
深作(以下、敬称略):
ポジティブなこと・ネガティブなことの両方がいくつもある中で、とくに私自身の成長という意味では、山谷と桑原が社員として入ってくれたことがもっとも大きいですね。
ネバーマイルは2020年4月に創業しました。それまで漠然と持っていた“起業”という選択肢を具体化するタイミングが来た。そんな感じで会社をスタートさせてから1年強、1人で事業を行っていました。いよいよ人手が必要になったのと、1人でやるよりもチームで成果を出したいという思いが強くなったのとで、最初に声をかけたのが前職の後輩にあたる山谷です。私にとっては“人を雇う”という初めての経験でした。
山谷:
私も初めての転職でしたから、互いに実験だねと言っていた気がします。
深作:
実験以前に、手が回らなくて困っていたから助けてという気持ちも大きかったけどね(笑)。
ファウンダー兼プレイヤーとして1年を過ごしていたけれど、心持ちとしてはまだ会社員の延長にあった頃かもしれません。社員を迎えて給与を支払うという経営者としての経験を積みながら、人間として成長した気がします。
桑原:
私の場合は深作とは10年来のつきあいで、もともと一緒に仕事をしたいと思っていました。深作が起業すると聞いてまずは副業で手伝い始めたけれども、どんどんやることが増えて自然な流れで入社した感じでしたね。
深作:
そう。桑原には、入社するか否かの選択肢は“はい”か“イエス”しかなかった(笑)。他の人と経緯が違いますね。

―3人体制から昨年、一昨年で社員が増えました。変化はありましたか?
深作:
顕著に感じたのは、暗黙知やノールックでの仕事のやり方が通用しなくなったことです。
山谷も桑原もネバーマイル以前に一緒に働いた経験があったので、「こう言ったら伝わる」とか「こうやったらこういう結果が出る」といったことの共通認識を、経験則的に持っていました。でもそれは、バックグラウンドも頑張ってきたフィールドも違う人には通用しないし、新しく入ってきたメンバーに対して「こんな考えがあるのか」という気づきもありました。これは3人とも感じていると思います。
桑原:
それはすごくあります。認識合わせに時間をかけるようになりましたね。そうするうちに、今までやっていたことも「これでいいんだっけ?」と疑問を持てる。人が増えることで、見直したり考えたりするきっかけが生まれると思います。
山谷:
そうそう、どうやったら伝わるのかなって試行錯誤していましたね。経緯を書き連ねてもうまく伝わらなかった、なんてことも最初はたくさんあったと思います。
深作:
私の打ち手は「とにかく丁寧に説明する」かな。
山谷:
それから、人が増えたことでオフィスを構えるようになりました。これは会社としての形が変わる出来事だったと思います。3人の頃はリモートワークが中心で、たまに集まって直近の課題整理などを行っていましたが、オフィスがあれば毎日出社してコミュニケーションを取るのが日常になる。仕事の進め方が変わりましたね。

大きくなるネバーマイル
―これからさらに人が増えます。また変化しますか?
深作:
1人増えると最低でも10個の課題が増えると思っているので、これから変わることもあるだろうし、そのために考えていることはいろいろあります。
ただ世間でいわれる「10人、30人、100人という組織の壁」はスッと乗り越えたい。そこを目がけて、社員が20人ぐらいになったところでネバーマイルのカルチャーを強めるだろうなとは思っています。ルール化やナレッジ化なども、そのひとつですね。
ただ社員数の増減よりも、世の中のトレンドの移り変わりの影響の方が、会社にとっては大きいと思ってるんですよ。例えばAIの展開や少子高齢化、東南アジアの人件費高騰など、世の中の出来事や状況に合わせて事業を構築していくので。人に関する課題は、それらの展開に伴って検討するものです。これからの変化への対応は頭の中で準備しつつも、長い時間軸で見ています。
山谷:
直近という視点で言うと私は、社員数10名程度の今、ひとつのターニングポイントが訪れているのかなと思っていますね。
社員全員が深作と直接コミュニケーションを取って、その結果として会社全体に経営者の考えが浸透しているのが今の状態です。人が増えることで、そのコミュニケーションに濃淡が出てくる。それが良くない方向にいかないようにしたいと思っています。
桑原:
そうですね。人が増えて多様化するのはいいことだと思うのですが、考え方をひとつにするとか、今ある“まとまり”については難しい面も出てくるでしょうね。そこの対策は、会社の方針を定めて対応していきたいです。CTOとしての私の役割は、その変化が現場やプロジェクトにどう影響するのかを見ていくこと。これまでのクオリティを死守しつつ伸びる仕事ができるよう考え、実践していくことだと思っています。

ネバーマイルらしさ
―ネバーマイルの魅力や特長と思えることを教えてください。
桑原:
会社と社員の関係が対等でフェアなことだと、私は思っています。やりたいことがあれば、積極的に発言することで手にすることができる。もちろん経営方針に一致している前提ですが、ちゃんと話し合える空気があります。我々はスタートアップでまだ組織の規模が小さいので、一人ひとりがいろいろやれますよね。その分、責任に対する覚悟もしっかり持つ必要がありますけど。
山谷:
それはあると思いますね。同時に私は、世間一般がベンチャー企業に抱く「何でもできる」いうイメージと比べると、ネバーマイルはより誠実なアプローチを取っているというイメージを持っています。メンバーがやりたいことに向かう工程を、深作や桑原が細かく見て、情勢に応じて柔軟に判断する。
まずは自分の実力を示して周りから信頼を得る。その繰り返しの中でだんだん好きなことができるようになる。その工程はネバーマイルでも変わりません。ただ、繰り返す回数が少ないと感じますね。
深作:
それはそうだよね。マーケットやファイナンスの状況を見つつ、そこはドライに判断していますよ。
桑原:
それで「できない」となった場合は、なぜダメかを説明してくれるのがうちの良さだと思いますね。
深作:
そう。気になったことは正しく伝える、その場ではっきり言うというのを大事にしていますね。後から「こう思っていました」と言うのは好きじゃない。「人としてダサくない」という行いを、とくに意識しています。だからフィードバックをすべきところはあとくされなく言い切る。人間として正しい状態なのか、ということはフィードバックの軸になっています。うちに入ったら、フィードバックは想像以上にもらえると思いますよ。

ネバーマイルが向かう道
―ネバーマイルが描く未来を教えてください。
深作:
ネバーマイルが目指すもののひとつが「デジタル産業やIT業界を変える」ことです。
それには時間がかかります。だから私はネバーマイルを100年続くような会社にしたいんですよ。今の規模ではファウンダーである私の色が目立つかもしれないけれど、その過程で私自身は徐々に透明になり、ネバーマイルという組織が一体となって業界に挑む、そんな未来を描いています。
「100年続く会社」という観点では、社名よりも社長が目立つような状態はよくないと思ってるんです。ファウンダーのコピーのような社員も求めていません。それぞれの色を出しながらみんなでやるのが好きですね。
山谷:
なるほど。でも深作が透明になるのは、1,000人、2,000人といった規模になった時のことのような気がします。それにミッション・ビジョンとか、何をする会社か、どういう方向に向かうのかは人が増えていく中で、だんだん変わっていくものなんじゃないかとも思っているんですよ。
例えば、今いるメンバーが会社のコアになるかというと分からないし、個人的には違うとも思う。優秀な人が入って私たちの上の立場になるのも良い。新しい人の良いところを取り入れて会社を変えるのもいい。状況に対応して柔軟に変化するんだろうなと思っていて、その時には今とは違う領域の新しい事業も立ち上げられればいいなと思っています。ビジネスの軸が増えると組織としてもおもしろくなります。
桑原:
将来的に深作が存在感を薄めていくという点については、会社の成長過程におけるひとつの可能性、くらいに捉えています。山谷の言うように、組織が発展する中で柔軟に変化していくでしょうけど、私は今の状況が悪いとも思わない。経営者のビジョンが社内に浸透し、皆が同じ方向を見ているのは組織の魅力とも言えますよね。
―新しく入って来る方に期待することはありますか?
深作:
成功体験や、過去の実績・経験にしばられないでほしい。同時に、矛盾するようですが、経験してきたことを良いカルチャーとしてネバーマイルに逆輸入する役割も担ってほしいと思っています。それまでネバーマイルが持っていなかったものが、一気に根付くからです。
例えば、2024年11月に組織開発を経験した人が入社したのですが、そのことでバックオフィスと呼ばれる管理系やコーポレート系の制度が急速に整いました。お客さまからも「変わったね」と声を掛けられるほどです。
新しい会社に入ったばかりの時期に、個人としての成果を出そうと焦ってもあまりうまく行きません。そこにフォーカスしすぎるよりは、その人が背負ってきた経験をそのままネバーマイルで解き放ってほしい、そんなイメージです。その先にチームとしての成果があり、山谷が言っていた新しい事業のようなものにもつながるんじゃないかと思いますね。
桑原:
エンジニア目線で言うと、新しい技術を持ち込んでほしいともいえますね。もしくは新しい技術に興味を持って学ぶ姿勢。エンジニアにとってこれは絶対に必要な素養だし、この姿勢が周囲に伝播し、周囲を触発してカルチャ―がよい方向に形成される気がします。
―メンバーが増える未来に楽しみにしていることはありますか?
深作:
「深作は“売上”と答えるだろう」と思っているかもしれないけれど、実は一人ひとりの成長が楽しみだったりします。
人が増え組織が大きくなることで手掛ける案件が大きくなる。それに伴い、携わったメンバーの経験値も大きくなる。その振り幅が今とはぜんぜん違ってくると思っています。経験の量も質も変わることで、各自がジャンプできる幅も高さが広がる。ネバーマイルに山谷が入ってくれた時に、私が感じた成長。それと同じようなことが、みんなの中にも起き得ると思っています。
山谷:
いいですね。私は、成長のジャンプを逃さず、効果的にそれを享受できるよう「凝り固まらない」ということを大事にしていきたいですね。身につけた方法論が正しいと思い込んでしまうと、たいがい物事がうまく回りません。だから、いつでも違う方法を試せるっていう思考でありたいですね。
桑原:
個人的なことだと、人が増えてもカルチャ―が変化していっても、今と変わらずプロジェクトや案件には全力投球していたいというのはありますね。社員数が増えてもシステムの開発や構築のところは、しっかりと見ていきたい。技術面で会社の基盤を作るのは自分の役割だと思っています。一方で、組織が大きくなるにつれて、その役割も変わっていくので、現場以外のことにもこれからは目を向けていきたいなと思っています。
